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「競艇」というと「日本船舶振興会」「笹川良一」と連想してしまう。
1976年、ロッキード事件が発覚し、児玉誉士夫や小佐野賢治など、日本の黒幕と目される人物が白日のもとに現れた。児玉誉士夫は「政財界の黒幕」「フィクサー」、小佐野賢治は「昭和の政商」と呼ばれ、十代の私たちにとっては、本宮ひろ志の漫画に出てくる黒幕や大物が実際に現れたといった印象を持った。
そのころ友人のひとりがいった。「本当の巨悪は他にいる」と。それが笹川良一のことだった。事件への関与というより児玉誉士夫や小佐野賢治以上の右翼の大物という意味だった。
有名な「日本船舶振興会」のCM、「人類は皆兄弟」「一日一善」を偽善的だと感じていた人は多かったと思う。モーターボートが波を切り疾走する場面に、子どもたちと一緒に「一日一善」と唱和する笹川良一。
競艇とはいわば「バクチ」ではないのか、それに「一日一善」はないんじゃないか、と私も思っていた。 笹川良一は戦前から軍部とのパイプが太く右翼の大物だった。
戦後、A先戦犯として巣鴨プリズン入獄。釈放後右翼運動を再開し、モーターボート競走法の制定に力を尽し競艇の生みの親となった。競艇事業の利権を握り巨万の富を得て、自民党の大物政治家、山口組等の暴力団、総会屋、統一教会などと深い関係を持ち、政財界や裏社会への影響力を強めた。
私は笹川良一に対して長らく「巨悪」「偽善者」的なイメージのみを持ってきたが、実際の社会福祉的な活動をみると(天然痘根絶のためのWHO事業に対する巨額の資金協力、環境やスポーツに対する援助)、アメリカの富豪などには多いが、日本人でこれだけ多方面に資金協力や援助をする人物は稀であるといえる。
亡くなったときの財産の意外な少なさは、黒幕としての恐るべき力や権謀術数も、家族を愛し世界は一家・人類は皆兄弟という思いも、笹川良一本来の姿であり、その二面性を同時に持った類を見ない人物で、昭和史の偉人のひとりかもしれないという思いもよぎるのである。
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